ふわっとアドテク ~Header Bidding~
広告テクノロジー業界で有名な配信手法の一つである、Header Biddingについてのふわっと解説です。
Header Biddingとは?
Header Bidding(ヘッダービディング)とは、プログラマティック広告の配信機能の仕組みの一つです。
Header Bidding登場前は、web広告の配信システムはいわゆる「ウォーターフォール形式」でした。
これは、複数のアドサーバに対して広告リクエストを送る順番があらかじめ決められているというものです。
アドサーバAへのリクエストがアドサーバBよりも先にされる設定になっていた場合、アドサーバBがより高単価の案件を持っていたとしてもアドサーバAがレスポンスした広告が表示されてしまいます。
こうした機会損失を防ぐために、複数のエクスチェンジャーやSSPに同時に広告リクエストを送り、勝者を決定するという仕組みがHeader Biddingです。
サーバサイドHeader Bidding VS クライアントサイド Header Bidding
Header Biddingの実装方法としては、サーバサイド方式とクライアントサイド方式の2種類があります。
サーバサイド方式
サーバサイド方式は、パブリッシャーからアドサーバに対して単一のシンプルなリクエストを送るだけで、アドサーバが各エクスチェンジャーやSSPに対してよしなにHeader Biddingを実行して広告をレスポンスしてくれるというものです。
パブリッシャーに対して複雑な実装が不必要なため簡単に準備することができ、またHeader Biddingがサーバで行われるためクライアントサイトでのページ遅延などが発生しません。
その反面、オークションの実行がサーバ内で行われるために透明性が低いといったデメリットもあります。
サーバサイド方式のHeader Biddingサービスの有名どころとしては、APS(Amazon Publisher Services)が提供するUAM、TAMなどがあります。
UAM(Unified Ad Marketplace)
APSが提供する、主に中小規模のパブリッシャー向けのウェブ特化Header Biddingサービスです。
サーバサイド方式であり、かつ各デマンドパートナーとの個別契約なども必要ないため、パブリッシャーが比較的容易に適用できるようになっています。
支払いに際してマージンが差し引かれるため、実質的にパブリッシャーにとっては有料となっています。
TAM(Transparent Ad Marketplace)
こちらもAPSが提供するHeader Biddingサービスです。
UAMとは異なり、大規模なパブリッシャーが対象です。
各デマンドパートナーにAmazonも加わる形でオークションが展開されます。デマンドとしてのAmazonはAmazon商品のリターゲティング案件や各種セールの案件などを豊富に取り揃えているため、対象ユーザや時期が合致すれば大きな収益を得られます。
ただし、他のデマンドパートナーは、パブリッシャーが独自に契約を結んでいる必要があります。
パブリッシャーに対する課金はなく、アプリでも使うことができます。
クライアントサイド方式
一方クライアントサイド方式は、オークションをクライアントサイドで実行します。
メリットとしては、オークションの透明性がより高くなる点や、cookieを用いたターゲティングがサーバサイド方式よりも行いやすいため収益が出やすいといった点が挙げられます。
デメリットとしては、クライアントサイドでオークション処理を実装する必要があるため、準備がサーバサイド方式に比べて複雑になる点があります。
クライアントサイドのHeader Biddingのサービスとしては、Prebid.jsが有名です。
Prebid.js
Prebid.jsは特定の企業のマネージドサービスではなく、アドテク業界の有志が協力して作り上げたオープンソースのプロダクトです。
誰でもダウンロードし、自分のメディアに実装することでHeader Biddingを始めることができます(ただし複雑です)。
オープンソースとはいえ、Prebid.jsをダウンロードしてHeader Biddingを独自に実装するのはかなり大変です。
そのため、Prebid.jsを元に簡単にHeader Biddingを実現できるソリューションを提供している企業もあります。FLUXなどはその代表例です。